多田沙紀
フォトスタジオ　スタジオ ジェリッシュ

「建設業からカメラマンへの転身」

「私の言うカワイイは褒めことばじゃない…」

横浜の元町で、写真の撮影スタジオを経営しています。
ウエディングや、家族写真、プロフィール写真など、「人」の撮影が多いのですが、特に好きで得意なのが、女性の撮影。
必然的に、女性のお客さんが増えてきています。
なぜ、女性なのか…。
それは、みんなカワイイから！昔から無類のカワイイもの好きなんです（笑）
女性には、カワイイとこが必ずあることを私は知っていて、
「その角度、カワイイですよ」とお客さんにかける声に、嘘はない…というか、ある意味、事務的に可愛さを告げているところがあります。
私の言うカワイイは褒めていないんです。お客さんがもともと持っている可愛さの事実を伝えているだけ。

「写真にはチカラがある」

大学は土木工学を専攻。
社会のためにインフラの仕事がしたいという漠然とした理由と、条件がいいということから建物の杭工事をする大手建設会社に就職します。
数年後、杭の設計という、特殊な仕事を任されるまでになります。
就職する前に起こった、東北の震災。いろいろな想いから、ボランティアに時々参加していました。
私が担当したのは、津波で流された、誰のものかもわからないアルバムや写真を、洗って干すこと。
写真に写る、戻らない時間、戻らない家族、戻らない笑顔…。
知らない家族の写真なのに、私はその日、涙が止まりませんでした。
写真にはチカラがある。人を動かすチカラ。自分も動かされたチカラ。
このチカラ知ったことが、私のターニングポイントだったのかもしれません。

自分の結婚式で出会ったウエディングプランナーの女性がいます。
家族と向き合う事の大切さを教えてくれた私の恩人。
この人から学んだことは、私も人の人生を変えるような仕事ができるかもしれないという事。
人生を変える仕事…そして、写真には人を動かすチカラがあることを知っている自分。
しばらくして私の仕事は、「社会」を造ることから、「人」を創っていくことに変わっていきます。

「あなたの写真で、最高の一日が最悪の一日になりました…」

少し仕事に慣れてきたころ、ある女性の写真を撮影したときに言われた一言。
仕上がった写真は、それなりの仕上がりでしたが、仕事としては問題のないものだと思っていました。
しかし、彼女は、全く違う評価を下します。
私の撮影が、この女性と、そしてその家族の最悪な一日の記憶をつくってしまっていることに、「人を撮る」ということの重さと怖さを意識することになります。
今までは、仕上がった写真に対して、喜びの言葉を多くもらっていました。
私は写真を撮るのが上手なんだと、思い込んでいました。
そんな中で言われた、この言葉。自分のおごりと間違いを目の前にもってこられました。
100人の褒め言葉は、彼女一人の言葉に勝ることはできませんでした。
「あなたの写真で、最高の一日が最悪の一日になりました…」
この言葉は、わたしの仕事に向かう姿勢を、いつも正してくれる大切な記憶になっています。
良い写真を撮影するのは、誰だってできる時代。
写真に写る人が自分自身を認め、さらに新しい自分に気が付く写真。
この人生でよかったなと思える瞬間を作り出す人間で在りたいと思っています。

「おめでとうと言ってもらえました…」

ウエディングの仕事で、冥利に尽きる言葉をもらいました。
親御さんから結婚を反対されていたお二人。
撮影の時には、そんなことになっているとは知らされていませんでした。
しばらくして、そのふたりからの嬉しい報告。
私の撮影した写真を見せたら、反対していた親御さんが、笑顔でおめでとうと言ってくれたそう。
あの時のウエディングプランナーさんの記憶がよみがえります。
家族と向きあうことを教えてくれたこと。
私もそんなお手伝いができたのかもしれないと感じ、胸が熱くなりました。

自分もお客さんも、その想いが写真にでる。意図せず、無意識に。
テクニックではない、内側にあるもの、お客さんの悦びを醸し出せる表現。
自分がどうなりたい・・・っていうのは、私はあまりありません。
好きなことをして、生きていきたい。表現していきたい。
その姿が誰かの自信や勇気に繋がると私は信じています。

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